書家の写真 ∞ 八戸香太郎

活動してきた各国の街を撮影中。オフィシャルなHPは→→→

秘密基地

少し曇った昼下がり。路面にはまだ朝の雨が残っている。

そこは閑静な住宅街を抜けた郊外。といっても住宅地からはほんの数分、坂を上ったところにある。

家の前では、小さな子供がお母さんに向かって一直線に突進している。どうやら走る事を覚えたらしい。何回も何回も、離れては走り、離れては走る。

信号待ちの車窓から、そんな柔らかな幸せをお裾分けしてもらいながら、我々は坂を駆け上がった。



「あった!」

それはカーブを曲がりきったところに突如として現れた。異様に長い煙突と白い煙。我々は少し戸惑いながらも、スピードを落としてゆっくりと進む。何か、見つけてはいけないものを見つけてしまった感じだ。

こんな巨大な建物がこんなところにあったなんて。
建物、というより建造物というべきか。いや、要塞と呼ぶべきかな。某国ならちょうどこんなところに軍事施設をつくってるんじゃないか、などと想像を膨らませながら、煙突を見上げた。

「いよいよだな。」

決意にも似た表情をうかべる我々をよそに、入り口には「午後の受付は1時からになります。」という看板。

入れん、、。

・・・・・・




気を取り直して出直し、また同じ道を走る。

改めてみても、デカイ。
しかしそんな巨大な建造物が、ひっそりと、ちょうど住宅街から隠れるようにして建っているのだから不気味だ。


我々は受付を済ませ、簡単な説明を受けた後、更に深部へと車をすすめていった。


至るところにカメラがある。余計な行動はするな、という暗黙のプレッシャーを感じずにはいられない。


我々は少しこわばった表情で愛想笑いをしながら、ゆっくりと指定された場所へ車を移動させた。

ここが目的を果たすべきゲート。

「なんなんだここは!?」




監視員が無表情で近づいてくる。そして何も言わずにゲートを指差した。
ゲートのハッチが開く。ここにブツを投げろ、ということである。
おそるおそる下と覗き込むと、巨大なベルトコンベヤーがうごめいているのがわかる。

我々はその場の雰囲気に飲まれたのか、会話する事もなく黙々と作業に入っていった。


いす

パネル



自転車

またパネル

プリンター

ペンキの空き缶

ベッド

etc

・・・


そう、ここはゴミ捨て場なのだ。
燃えるゴミも燃えないゴミもない。金属だろうがプラスチックだろうが関係ない。
ただひたすら、ゴーゴーと音を立てて流れていくベルトコンベヤーに投げ入れるためだけの場所。

北海道弁でゴミを捨てる事を「ゴミを投げる」という。関西では「ほかす」だ。だがここでは、正にゴミを投げ捨てるといった表現が正しいと思う。家具を放り投げていく作業。自転車をぶん投げる作業。音楽ひとつないだだっ広い空間にただ「ガシャーン!」「ドーン!」という音がこだまする。




作業はほんの10分ほどで終わった。何の事はない。それだけの事だ。

なのに何だか心がそわそわしている。いけない事をしたような罪悪感といらないものを捨てたすっきり感を混ぜ合わせたような、なんだか、とにかく、しっくりこない。何か心にひっかかっている。何かが心臓をギュッとさせる。


でもそんな事を考える間もないままに、最後のゲートに向かわされた。
ここで料金を払うらしい。「220kgー3000円。」

考えるのをやめろ。

誰かがそう言っているような気がした。


いまここで220kgのゴミが捨てられた。それだけの事なんだ。
空虚な気持ちになる必要なんてない。毎日ゴミが捨てられている。その中のたった一粒を目撃したにすぎない。




・・・


でも、

ものをつくる人がいて、それを売る人がいて、それを買う人がいて、使う人がいるんだと思う。
そしたら壊れたものが出てきて、要らなくなったものが出てきて、結局捨てる事になるんだと思う。


どこに!?


・・・




地球を我がもの顔で占拠している我々人間は、多分他の種族からしたら迷惑千万なんだろうけど、それでも我々は国境なんかを勝手にひいてみたりして、その線引きが原因で喧嘩になって殺し合ったりして、地雷を地中に埋めたりする。あるいは汚い水は見たくないから海に流せば自分達とは関係ないと思っている。土を自分たちのものだと思い込み、水を人間の所有物と勘違いしている。とにかく我々は数ある種族の中で唯一、ゴミを出す種族だ。どんどんゴミを出す。そのまままだと汚いからゴミを燃やす。砕く。そして埋めちまう。我々はゴミを出し続ける。どんどんどんどん、どんどんどんどん出し続ける。最初に見た幸せそうな家庭からも、どんどんどんどんゴミが出てくる。それは仕様がない事なんだろう。俺もゴミ出しまくりだし。でも、そのゴミが砕かれ、燃やされて、あの高いトンネルからモクモクとした煙に変わる。そしたらその煙は大気中にばらまかれて、そうして、あの子の肺に入っていくんだよ。そう思うとゲッとなる。でも仕方ない。仕方ないと思わないといけない。たぶん。。

別に環境に配慮するとか、エコとか、そういうのに興味ないけど、「地球にやさしく」とか聞くと逆に「お前何様だよ。なんで人間が上から目線で、やさしく、なんだよ。どこまで人間中心だよ。」とつっこんでしまうけど、結局人間ていろんな意味で残念な生き物なんだなって思う。



ゴミ=不要なもの=無くなった方が良いもの=残念な生き物=人間=俺=ゴミ



我々は車中でそんな事を思い巡らせながら帰路についたのだった。








あ、今日の車、ディーゼルでした。てへ。



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photo by project8 - -
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